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Kam doskáče ranní ptáče 早起きは三文の徳

チェコスロバキア映画 (1987)

チェコスロバキアらしい子供映画。科学的にみればナンセンスだが、主人公パヴィルのクローンが2体というのは面白いシチュエーション。以前紹介した『The Other Me(もうひとりの僕/クローンは優等生)』(2000)ではクローンは1体。ここでは、アンドリュー・ローレンス(Andrew Lawrence)が1人2役を演じていた。未紹介の『Splitting Adam(アダムがいっぱい)』(2015)では、デジタル時代の特撮をフルに活用して、5体のクローンを含め、ジェイス・ノーマン(Jace Norman)が1人6役。しかし、アナログ時代のこの映画では、主人公のパヴィルをパヴィル・ディヴィシュ(Pavel Diviš)、クローンの2人をルボシュ・ディヴィシュ(Luboš Diviš)と、双子の兄弟で演じている。3人が同時に出ている場面は、アナログ時代の特撮であろう。クローンではないが、『The Prince and the Pauper(王子と乞食)』(2000)では、ジョナサン・ティミンズ(Jonathan Timmins)とロバート・ティミンズ(Robert Timmins)の双子、『A nagy füzet(悪童日記)』(2013)でも、ラースロー・ジェーマント(László Gyémánt)とアンドラーシュ・ジェーマント(András Gyémánt)の双子が演じ、『Tom & Thomas(トムとトーマス)』(2002)では、名子役のアーロン・ジョンソン(Aaron Johnson)が1人で演じている 。

映画の題名『Kam doskáče ranní ptáče』を直訳すれば、「早起き鳥はどこで頑張るか」となる。しかし、映画の中で、三度 "ranní ptáče dál doskáče" という諺「早起きは三文の徳」が使われている。従って、ここでは、諺の方を仮題として選んだ。なお、この映画は、現在、https://www.youtube.com/watch?v=zidIqcqTRh0 で高画質で観ることができる。ただし、字幕は付いていない。また、字幕サイトで取得できる英語字幕は、チェコ語の字幕をいい加減にgoogle翻訳したもの。2行になった台詞や、長文で幾つかのパーツに切られた台詞は、1行につないでからgoogle翻訳にかけないと、意味不明の訳になる。たとい1行でも、例えば、パヴィル3が居酒屋でMráz氏を捜す場面の台詞 「Je tady někde děda Mráz?」で、名前の “Mráz” が入っているのに、この部分の英語字幕は、「Is there somewhere Santa Claus?」となっている。なぜ、サンタなのか? それは、チェコ語でMrázは、Jack Frost(霜の妖精)を意味するので、それがサンタに化けてしまった結果。万事がこの調子なので、この似非(えせ)字幕を使ってもチンプンカンプンになるだけ。ここでは、台詞に忠実なチェコ字幕と、解説的で字数の多いロシア語字幕の双方を併用した。

映画の最初の30分(全体の36%)は、パヴィルの腕白ぶりの紹介に割かれている。機械いじりが得意で、それを応用して、友達を助けるために “世間から見れば悪いこと” を平気でしてしまう。情けない点は、年長の不良3人組に弱く、いいなりになって、小さい子からも軽蔑される。パヴィルのアパートには、怖い管理人のおばさんがいて、パヴィルの素行が悪いので、嫌われている。パヴィルの母は、動物のクローンをつくる物質の研究助手をしていて、実験は今一歩で実用段階に至っていないが、パヴィルは、自分で何とかできると考え、こっそり試料を盗み出す。最初の30分の最後は、パヴィルが、管理人のおばさんから頼まれたTVの修理で、 悪戯をしてしまい、それまでの悪さの情報が一気に母に伝わったこともあって、今まで鷹揚だった母も、遂に堪忍袋の緒が切れる。その夜、パヴィルは、母の機嫌を取ろうと、キッチンの掃除をした後、研究所から盗んできた “実用段階一歩手前の試料” を抱いてベッドに入る。その夜は、激しい雷雨だった。そして、朝パヴィルが目を覚ますと、自分と同じ姿の少年がいて、パヴィルだと名乗る。試料が消えていたので、それがクローン人間だと気付くが、クローンには、その認識はない。ただ、試料から生まれるクローンの特性として、誕生時のオリジナルの気分を受け継ぐという特性があるため、クローン(パヴィル2)は、オリジナル(パヴィル1)より勤勉な性格だった。そこで、学校嫌いのパヴィル1と違い、積極的に学校に行きたがるが、あまり正直なので、パヴィル1が学校でやってきた不正行為を担任に話してしまい、印象はさらに悪くなる。しかし、正義に対する感覚はパヴィル1より厳正だったため、ランチ・タイムに年長の不良3人組が起こした虐め行為に対し、敢然と立ち向かう。アパートに戻ったパヴィル2は、試料を盗み出した件でパヴィル1を責め、パヴィル1は、2つ目の試料を研究所に返すと嘘を付き 泳ぎに行く。しかし、行った先の公園で不意に雷に襲われ、2人目のクローン(パヴィル3)が生まれてしまう。その直前にパヴィル1は怒っていたので、パヴィル3は怒りっぽい性格となる。翌日、学校に行ったパヴィル3は、年長の不良の親分に襲いかかり、生徒達から見直されるが、親分からは恨まれる。ここからは、パヴィル1,2,3のそれぞれの別々の行動が、巧みに交差する形で描かれて面白い。アパートの管理人は、静脈炎で動けなくなり、パヴィル3は、管理人の別居中の夫を 看病のために何とか連れてこようと努力する。パヴィル2は、一番の友達に歴史の勉強をさせようとして、徹底的に嫌われる。パヴィル1は、外出した際、待ち構えていた年長の不良3人組に捕まり、危うく大怪我をさせられそうになるが、パヴィル2と3が間に合って助太刀し、逆に、3人組をボコボコにする。3人組は、それぞれの父や母と一緒に、パヴィルのアパートまで暴行を受けた抗議に来るが、現れたパヴィルが1人だけで、しかも、3人組の肩までしかない子供だと分かると、逆に、“こんな子供1人にやられた情けなさ” を叱られる。この事件の際、パヴィル2と3は責任を取って、自主的に試料に戻ってしまう〔それまでの記憶が消えて、いわば、“死んで” しまったに等しいので、よく考えれば、可哀想で悲劇的な結末だ。『The Other Me(もうひとりの僕/クローンは優等生)』では、クローンは、オリジナルの弟として、その後も生き続けることができる〕。唯一の明るい点は、パヴィル1は、2と3の遺志を受け継ぎ、弱い者虐めの上級生に対し、立ち向かえるような少年に変わったこと 。

Pavel Diviš、Luboš Divišは、1973年生まれの双子の兄弟。それ以外の情報はない。撮影が1987年なら13歳。

あらすじ

「遺伝学及びバイオトランスフォーメーション研究所」の階段を上がりながら、研究主任のトレチカが大勢の報道陣に対し説明している。「C-3AX計画は、生命体の分野で新しい時代の幕開けとなるものです。この計画の最終目標は、我々が組み込む情報により特定の方向に増殖するような細胞の集合体を創り出すことにあります」(1枚目の写真、矢印はトレチカと一緒に研究しているムシル博士。主人公パヴィルの母)。研究室に入ってから、トレチカは、報道陣の 「生きた人間さえ」という質問に対し、現段階では無理で将来の課題と答える。そして、報道陣に公開されたのがチンパンジー。両脇に置かれた同じ形の台には、赤い不定形の物質が置かれている(2枚目の写真)〔今後は “試料” と呼ぶ〕。そして、照明が消され、代わりに青い光線が当てられると、赤い物資が光の粒子を放ち始め、瞬時に中央のチンパンジーのコピーに変わる(3枚目の写真)。記者からは称賛の声が上がるが、トレチカは、「残念ですが、この物質は パルス照射を終えた後まで形態を維持することができません」と言い、青い光線が止むと、2匹のチンパンジーはすぐに試料に戻る。
  
  
  

タイトルが簡単に示された後、場面は パヴィルの部屋に替わる。実験が好きなパヴィルの部屋は、片隅に寝る場所が確保されているだけ。そこに、母から電話が掛かってくる。パヴィルは腕を伸ばして紐を引っ張る(1枚目の写真)。すると、予めセットされた受話器が自動的に外され、録音再生装置の上に移動する。母:「お早う、パヴィルちゃん」。録音されたパヴィルの声:「お早う、ママ」。「早起きは(ranní ptáče)…」。「三文の徳(dál doskáče)」(2枚目の写真)〔2人の合言葉〕。「よろしい。じゃあ、軽く運動して、冷水でシャワーを浴びる。いいわね?」。「うん、ママ。血行が良くなり、冴えた頭で学校に行けるから」。「その通り」。「朝食はチーズ・サンドと暖かいミルク」。「ココアは入れちゃダメよ」。「分かってるよ、ママ。カルシウムと結びついて、虫歯になるからだよね」(3枚目の写真)〔録音の音声が こんなにぴったり合うとは思えないのだが、そこはコメディなので…〕。「良識があるわね。学校では、いい子でいるのよ。ママが帰ったら、おいしい夕食にするわね」。「待ち遠しいよ、ママ」。「じゃあね」。
  
  
  

パヴィルは、4階から、階段の手すりに跨って滑り降りる(1枚目の写真、この部分は3階から2階)。そして、1階の一番下まで滑り降りた時、そこには、管理人のモレゾヴァの大きなお尻があった。パヴィルの脚が当たったモレゾヴァは床に転び(2枚目の写真)、床を拭いた汚れた水の入ったバケツからは、泥水が床に流れる。「こら! この腕白小僧! こんなに汚して! 出てけ! 今度やったら耳をちょんぎってやるからね!」 。パヴィルは隙を見て玄関ドアから舗道に逃げようとするが、自分のナップザックにつまずいて転んでしまう(3枚目の写真、飛び出してきたパヴィルをジャンプして避けたのは、クラスの女の子)。
  
  
  

パヴィルは、学校に行く途中で、彼を待っていた級友のミレクから声をかけられる。ミレクは、今日、当たっている歴史の発表の準備ができていなかったからだ。「何が心配かって? 歴史だよ」(1枚目の写真)。パヴィルは、「大丈夫、何とかする」と簡単に請け負うが… 実際にスライドを使った発表が始まると、内容は14世紀の神聖ローマ帝国皇帝のカレル4世〔首都プラハで生まれた王様なのでので、共産主義時代のチェコスロバキアでも授業で教えている〕。しかし、準備をしてこなかったミレクは、しどろもどろ。「カレル4世は… カレル4世の治世は… カレル4世はボヘミアを治めました」(2枚目の写真)。パヴィルは、「4人の奥さん」と囁き、両手を力一杯 馬蹄の形になぞって動かしてみせる(3枚目の写真)。それを見たミレクは、「王様は奥さんが4人いました。うち1人は、すごく力が強くて素手で蹄鉄を曲げられるくらいでした」〔WEBサイト “Kulturportal” によれば、4人目の王妃Elisabeth von Pommernは、「素手で蹄鉄を壊し、剣を曲げ、鎖帷子を引き裂いた」とある〕。それを聞いた教師は、「蹄鉄を曲げるより、もっと重要なことがあるでしょ」と批判する。ミレクは、仕方なく、カレルと名の付くものを挙げていく。「カレル4世の治世の間に、カレル大学〔中欧最古の大学〕、カルロヴィ・ヴァリ〔著名な温泉地〕、カルロヴァ・ステューデンカ〔癒しの水の井戸〕、カレル広場〔中欧各地にある〕、カレル橋〔プラハ〕、カルロヴィ・ヴァリ岩塩、カルロヴィ・ヴァリ・ワッフル〔お菓子〕…」。
  
  
  

ミレクはパヴィルにSOSを出し、パヴィルは、机の下にもぐると、ポケットからカセットテープを取り出すと、床に置いてあったナップザックの中から特殊な装置を取り出し、そこにカセットを入れる(1枚目の写真、矢印は装置)。パヴィルがスイッチを入れると、教室内のスピーカーから音声が流れる。「お知らせします。イェリンコヴァ先生、校長室までお出で下さい」。教師は、生徒の1人に窓の暗幕を上げさせ、教室を出て行く。教師がいなくなると、教室は制御不能なほど騒がしくなる。パヴィルは、チェコの地図の本を別な子に持ってこさせ、それを使ってミレクに教える(2枚目の写真、矢印は地図帳)。一方、教師は校長室を訪れる。「呼ばれましたか、校長先生?」。「あなたを?」。「校内放送で?」。「放送ですと?」。「だから、来たのです。お呼びになってない?」。「いいえ」。「ムシルだわ。失礼します」。混乱の巷(ちまた)だった教室では、見張りが、「気をつけろ。先生だ!」と叫ぶ(3枚目の写真)。すると、全員が席に戻り、教師が入ってくると、暗幕も下がっていないのに、ミレクが とうとうとしゃべり始める。「彼は、プシェミスル家のエリシュカとルクセンブルク家のヤン〔ヨハン〕の息子で、ボヘミアとドイツの王、ローマ皇帝で、在位は1346~1378年でした…」。教師はミレクを黙らせ、パヴィルの前まで行くと、「学校は、実験の場じゃないって警告したでしょ」と詰問する。その時、新たな校内放送が流れる。「お知らせします。ハイキングの参加者の会合は…」。教師は、それもパヴィルの悪戯だと勘違いし、「今すぐ止めなさい。さもないと、立場が悪くなりますよ!」。パヴィルは肩をすくめると、壁に付いているスピーカーをむしり取る〔確かに、止めたことにはなるが、器物破損行為〕
  
  
  

ランチ・タイム。パヴィルの斜め横に座ったミレクは、土曜日のサッカーの試合で、彼がケガをしたらチームが弱くなると話す(1枚目の写真)。それを聞いた、パヴィルの向かい側の席の子が、「弱くなるって? 試合に出ないくせに」と、ズバリ指摘。「誰が出ないと言った? 復活祭の日の試合じゃ 3点入れたんだぞ」。「試合出場は その日だけだろ?」〔つまり、かなり下手〕。それを認めた上で、ミレクは、土曜の試合にはきっと出場すると言い張る。さらに、奇妙な話だが、父の車に乗って事故に遭えば出場できなくなる恐れがあるので、車を動かせないようにタイヤに穴を開けてやるとまで言い出す。それを聞いたパヴィルは、「そんなことする必要はない。僕にいい考えがある」と自慢げに言う(2枚目の写真)。その結果、パヴィルはミレクの父のミニカーのボンネットを開け、何やら細工をする(3枚目の写真)。
  
  
  

1人に1台パソコンの並んだ理科教室で、男性教師がハレー彗星について話していると、音楽部の生徒2人がやってきて、壊れたスピーカーをパヴィルに直して欲しいと頼む。授業中にもかかわらず、教師は快諾し、パヴィルに行かせる。パヴィルは簡単に修理する(1枚目の写真)。パヴィルを呼んだ生徒は、「ありがとう、ムシル、こっちへ来いよ」と別な部屋のドアの前まで連れて行く。「ムシル、君は天才だ。感謝のお礼に値する」と言い、両開きのドアの隙間から中を覗かせる。中を見たパヴィルは、「でもね、諸君。僕は、もうこんなのは卒業してる」とクールに言う。3人の生徒がいなくなると、さっきの言葉とは裏腹に、隙間から熱心に覗く。それに気付いた1人が、パヴィルのお尻を突き飛ばす(2枚目の写真)。お陰で、ドアは開き、パヴィルは半裸の女子生徒もいる体育室に飛び込んでしまい、悲鳴が上がる(3枚目の写真)。今朝、“アパートから飛び出して来たパヴィルをジャンプして跨いだクラスの女の子” は、パヴィルを見て 「変態ね」と手厳しい。
  
  
  

場面は変わり、学校から、如何にもワルの3人組が出てくる。階段のてっぺんに置いてあった “人形を乗せたミニ乳母車” を、足で蹴飛ばして落下させる。そして、下級生がグラウンドでサッカーをしているのを見つけると、割り込んで行き、3人だけでボールを蹴って邪魔をする。最後に、ボールを誰もいない林の方に蹴る。ボールの持ち主がボールを取りに行って逃げると、ワルの1人が追いかけて捕まえ、「放せよ! 何もしてないじゃないか!」という抗議など無視し、そこに他の2人のワルが合流する。ワルのボス、チュンドリークの前で、手下の2人が、背丈が3分の2しかない小児を虐める。それを見たパヴィルは、「あんたら、放してやれよ。チビなんか虐めてさ」と、思わず口を出す(1枚目の写真)。手下から「とっとと家に帰れ」「口に気を付けろ」と罵声が飛ぶ。パヴィルは、思わず、「天狗になるな」と言い返す。その言葉に怒った3人は、パヴィルを捕まえて捩じ上げる。「やい、もう一度言ってみろ! 何になるなだと?」。「楔(くさび)だよ。いや、錐(きり)かな〔天狗の鼻のもじり〕」(2枚目の写真)「ボールに穴が開くといけないから」。「穴だと? やってみせろ」。1人がナイフを渡し、「これで切れ。でないと、お前を切り刻むぞ」。パヴィルは、仕方なく、ナイフでボールに穴を開ける(3枚目の写真)。ボールにナイフが刺さったところで、1人が、「現行犯で逮捕だ」と言い、チュンドリークは「恥ずかしくないのか?」とパヴィルに言った後で、ボールの持ち主に向かって、「奴が、何をやったか見たな」と言い、使い物にならなくなったボールを蹴って渡す。持ち主の子は、本来なら3人組を批判すべきなのに、「ムシルのくそったれ」と言い、ボールをパヴィルに投げつける。頭に来たパヴィルは、「黙れ! お前のために立ち向かってやったのに」と言いながら、ボールを何度も踏んづけてペシャンコにする。持ち主の子も、「役立たずのディフェンダーなんかクソだ」と言いながら、パヴィルを突き飛ばす。
  
  
  

夜、暗くなり、ミレクは祖母のアパートから出てきた父親に、「パパ、車に乗らないで。最近、事故が増えてるから」と言い、パヴィルが細工した自動車に乗るのを阻止しようとする。次に出てきた母親には、「ママ、昨夜、悪い夢 見たんだ。車に乗らないで」と止める。最初に車に乗った父がキーを回すと、いきなり、サイレンが鳴り出す。母が、フロント・ガラス越しに何事か喚くけれど、父には聞こえない。そのうち、車内で火花が散り、煙が充満する。そのあと、父がアクセルを踏んだからなのか、車が勝手に動いたのかは不明だが、ミニカーはゆっくりと前進し、駐車場の端から前輪が落ちてストップし、エンジンルームから火花が飛んで白煙が拡がる(1枚目の写真)。その次のシーンもパヴィルの失敗。設計図に従って作った装置のスイッチを入れると、ここでも火花が飛び(2枚目の写真)、建物全体が停電する。近くの部屋の住民は、「すぐ直せ。さもないと ぶん殴るぞ!」「TVのドラマ、どうしてくれるの!」。1階から4階までの吹き通しを撮った映像では、多くの住民が懐中電灯を持って廊下に出ている(3枚目の写真)。パヴィルは、1階にあるヒューズボックスを点検し、照明は元に戻る。
  
  
  

ちょうどその時、パヴィルの母が玄関を開けて入ってくる〔母は、パヴィルの失態に気付かない〕。パヴィルは、「やあ、ママ、待ってたんだ」と言い、玄関にいた口実にする。そして、母が両手に荷物を持っていたので、“いい子ぶり” を発揮して、荷物を2つとも持ち、母の後を付いていく(1枚目の写真)。「もう、くたくた。悪い知らせは聞かせないで」。「そんなのないよ。実験の方はどう? まだ一進一退?」。「そうね、一進一退よ」。「ねえ、ママ、僕に試料を1つ持ってきてよ。思うんだけど、電磁場の中に入れれば きっとうまくいくと思うんだ。世紀の発見が、ムシル母子によってなされたと新聞に書かれたらすごくない? そして、この発見はムシリンって呼ばれるんだ」。母は、「そうね。ムシラークかも」と適当に応えるが、試料の件はきっぱり断る。2人が部屋に入ると、すぐに呼び鈴が鳴り、そこに現れたのは管理人のモレゾヴァ。今朝は、パヴィルのことを散々叱ったのに、今回は、山盛りの焼いたお菓子を持参しての訪問。目的は、パヴィルに故障したTVを直して欲しいとの依頼。キッチンテーブルに座ってコーヒーを待っている間、モレゾヴァは、「パヴィル君は、とっても頭のいいお子さんですわ、先生。あの子のことは、揺り籠の時から知ってますが、可愛い坊やでした」。その時、パヴィルが悪戯で天井から吊ったゴム製のタランチュラがモレゾヴァの頭に近づいてくる。「それが、こんな悪タレ坊主になるなんて」。タランチュラが顔の前まで降りてきて、モレゾヴァは悲鳴を上げる(2枚目の写真、矢印はタランチュラ)。飛んできた母は、タランチュラをつかむと、「怖がらないでモレゾヴァさん、パヴィルの悪戯ですわ」と宥める。その様子を、パヴィルは自分の実験室のスピーカーで聞いている。すると、モレゾヴァが、「こんなこと申し上げて お気になさらないで。でも、先生は、再婚なさるべきですわ」と言い出す(3枚目の写真、2つあるスピーカーの左の円内には「玄関」、右の円内には「台所」と紙が貼ってある)。それを聞いたパヴィルは、「バーバ・ヤーガ〔スラヴ民話に登場する魔女〕」と怒る。モレゾヴァは、夫が必要な理由として、「何と言っても、あんな悪タレは、パンツをひん剥いて 鞭をくれてやらないといけませんから」とまで言う〔この発言が、TVの修理に影響する〕
  
  
  

翌日の朝、パヴィルの母が電話をかけ、自動音声が応答する。母:「お早う、パヴィルちゃん」。録音されたパヴィルの声:「お早う、ママ」。母は、いつもと違い、TVクルーが来ていて 研究主任のトレチカと協議すると話し始める。しかし、録音はワンパターンなので、「三文の徳」。「パヴィル、ふざけてる時間はないの」。「分かってるよ、ママ。カルシウムと結びついて、虫歯になるからだよね」。「もう十分。今すぐやめないと、夜帰ったらお仕置きよ」。「待ち遠しいよ、ママ〔ここだけ、ある意味ぴったり〕。その後、学校でのシーン。前日の校内放送でチラと言っていたように、今日はハイキングの日。生徒達が列をなして学校から出て行く。その中に、1人、杖をついて痛そうに歩いている生徒がいる。もちろん、パヴィルだ(1枚目の写真、矢印)。部屋の窓を開けて生徒達を見ていた校長が、「イェリンコヴァ先生、その杖を突いた生徒は?」と訊く。「また、ムシルです」。そして、パヴィルに、「足をどうしたの?」と訊く。「ひねっちゃったんです」。教師は、パヴィルの手を取って歩かせてみるが、とてもハイキングには連れて行けそうにない。それで、帰宅して寝ているよう指示する。パヴィルは、みんなの姿が見えるうちはビッコをひいて歩いていたが(2枚目の写真)、校舎の裏に行くと 普通に歩き始め、チャップリンがやっていたように、杖をくるくる回して歩く(3枚目の写真、矢印)。
  
  
  

パヴィルが向かった先は、母の研究所。試料をこっそり頂戴しようという魂胆だ。しかし、玄関を開けようとすると(1枚目の写真)、顔見知りの警備員に、TVクルーが来ているので、2時間後に来るように言われてしまう。勝手知ったるパヴィルは、玄関ではなく裏口から入る。そこには、「C3 ax計画。立入禁止!」と書かれている。パヴィルは、実験室に入って行き、試料の入ったガラスケースから2個取り出して、持参のポリ袋に入れる〔映像的に分かりにくいので、写真はカットする〕。ここで、取材班の代表の質問のシーンが挿入される。「視聴者の大きな関心は、あなた方の方法によって 人間を人工的に創ることが可能かということです」。これに対し、トレチカは、「そうした発想は科学的ではなく、これはあくまで遺伝学の進歩のための研究です」と質問を回避しようとするが、パヴィルの母は、「大きな問題があります。神経細胞は、ある種の特定な機能状態でしか変化しません。従って、人間が人為的に創られた場合、コピー人間は、オリジナルの人間の感情をそのまま引き継ぎます。例えば、オリジナルの気分が意地悪で攻撃的な場合、コピーも意地悪で攻撃的になります」(2枚目の写真)〔この言葉は、その後のパヴィルのコピーに、そのまま反映される〕。家に戻ったパヴィルは、TVで放映されたトレチカの最後の言葉を聴きながら、ポリ袋から試料を1つ取り出す(3枚目の写真、矢印)。「私と同僚たちは、これが未来にとって新時代の始まりだと思っています。案外早く実現するかもしれませんが」。それを聞いたパヴィルは、「すぐさ、同僚」と、自信たっぷり。
  
  
  

その次のシーンでは、母の受難が示される。第1号となったのは、サッカーボールにナイフで穴を開けられた子とその母親。彼女は、潰れたボールを見せてお金を要求する(1枚目の写真、矢印はボール)〔それにしても、悪いのはチュンドリークなのに…〕。次は、洗濯物を取りに行き、そこで息子の担任の教師から最近の悪い行動について聞かされる(2枚目の写真)。3番目は、ミレクの父から車が受けた損傷について指摘・抗議される(3枚目の写真)〔損害賠償は求めない〕
  
  
  

そして、ダメ押し。母が、大量の荷物を持って階段を上がっていると、管理人のモレゾヴァに呼び止められる。そして、「先生、まあ、ちょっと見て下さいな。あなたの悪戯っ子がやったことを」と言って、無理矢理 部屋に連れて行かれる。部屋に置かれたTVの画像は上下逆さまに映っている。モレゾヴァが、TVをポンと叩くと、今度は画像が横向きになる。モレゾヴァは棚の上に置いておいた棒を取ると、「躾(しつけ)は、ちゃんとした棒なしにはできません」と言って、母に棒を渡す(1枚目の写真、矢印は横向きのTV画像、母の手には荷物が一杯)。その頃、パヴィルは、取り出した試料に青い光を当て、何も起きないので、「こんな旧式の装置で実験することは不可能だ」と言って、皿の試料を棚に置き、2人の声が聞こえたので、ポリ袋に入ったままの試料をベッドの枕の下に隠す〔試料は2個ある〕。パヴィルが、玄関まで母を迎えに行くと、2人が怖い顔をして立っていた(2枚目の写真)。モレゾヴァは、TVを横の棚に置くと部屋を出て行き、残された母は、両手に持っていた荷物を床に投げ出すと、脇に挟んでいた棒を取り出す。「ママ、何するの? 体罰は子供の正常な生育の妨げになるんだよ」。母は、「この悪ガキ!」と言って追いかけるが、すばしっこいパヴィルにはとても敵わない(3枚目の写真、矢印は叩く棒)。あきらめた母は、キッチンテーブルに頭を乗せて泣き出す。「どうしたの、ママ?」。そう言うと、パヴィルは棒を取り、「叩きたいなら、叩いて」と言って、イスに登って母にお尻を向ける。しかし、息子に失望した母は叩こうとせず、「あなたのような愚か者、見たくもない。みんなが、あなたのことを話題にするけど褒め言葉はゼロ」と嘆く。パヴィルが、「中傷だよ。誰がそんなこと言ったの」と言っても、有罪確定者の 口先だけの言い逃れなど 聞いてもらえない。
  
  
  

母が本気で怒り、失望したことを悟ったパヴィルは、母が籠ってしまった居間に入って行くと、「ママ、改心するから。月曜から 生まれ変わるよ」と言う。「変わるもんですか」。「分かった。明日からだよ。朝起きたら 別人になるから」(1枚目の写真)。「信じないわ」。「じゃあ、今すぐ。『今』って 言ったんだよ。見てて。そうだ、お皿を洗うの忘れてた」。パヴィルは、キッチンに行くと、母が洗いもしない皿や鍋を丁寧に洗っていく(2枚目の写真)。それが終わると、今度は、掃除機で絨毯をきれいにする。さらに、靴も磨く(3枚目の写真)。
  
  
  

片付けと掃除が終わった後、パヴィルはパジャマに着替え、ロシア語の教科書を持って居間に入って行くと、学校でロシア語の先生から、「よくできた〔Оочень харащо〕」と褒められたと話し(1枚目の写真)、さらに、「ママ、試料のことで話があるんだけど」と言うが、母は、気のない返事しかくれない。「あなたが、素直で正直な子になったら話しましょう。一晩では無理ね」(2枚目の写真)。パヴィルは引き下がるしかない。自分の部屋に行くと、日中に枕の下に入れた試料のポリ袋を取り出してじっと見ると、それを手に持ったまま布団に入る(3枚目の写真、矢印は試料)。
  
  
  

その日の真夜中は雷雨。強い風で窓が開き〔内開き〕、雷光が辺りを照らし出す(1枚目の写真)。パヴィルが、「僕、素直で正直な子になるよ、ママ」と寝言を言った時、1本の手が布団の中から現れる(2枚目の写真、矢印)。ここから、オリジナルのパヴィルには、分り易いように①の印を付ける。すぐに手は2本になり、続いて顔も現れる(3枚目の写真)。1つ目の試料から生まれたコピーのパヴィルには②を付けて区別する。このコピーは、先に母がTVクルーに話したように、コピー人間は、オリジナルの人間の感情をそのまま引き継いでいる。直前に、オリジナルが、「素直で正直」と言ったので、コピーは、素直で正直なパヴィル2となる。
  
  
  

朝になり、冷水シャワーを浴びたパヴィル2が、母からの電話を受けている。「お早う、ママ」。「起きる時間よ」。「『起きは三文の徳』。分かってるって、ママ」。「ベッドから起きなさい」。「もう、とっくに起きてるよ」(1枚目の写真)。「これ、あなたなの? テープレコーダーじゃないの?」。「まさか。嘘なんかつかないよ。じゃあね、ママ」。話し声で目が覚めたパヴィル1は、電話で話している自分そっくりの少年に気付き、びっくりする(2枚目の写真)。「ここで何してる?」。「何って、ここに住んでるんじゃないか。ほら、起きろよ、とっくに時間だぞ」と言いながら、パヴィル2はパヴィル1の頭をどついた後、出口近くのイスに掛けてあったパヴィル1の服を着ようとする。自分の服が取られることに危機感を覚えたパヴィル1は、ベッドから飛び出ると、「それに触るな! 僕のジーンズだ!」と、ズボンを奪い取る(3枚目の写真、矢印はズボン)。パヴィル2:「僕のでもあるんだぞ」。パヴィル1は、棚の上のダンボールを降ろし、中から古くなって少し破れた服を取り出す。
  
  
  

パヴィル2は、パンツ1枚でキッチンテーブルに座ると、チーズ・サンドと暖かいミルクを取り始める。そこに、パヴィル1が濃い苔色〔くすんだ黄緑系〕の上下の服を持ってきて、「これを着ろ」と イスに放り投げる。そして、「僕がお前を作ったんだ、いいな?」と、上下関係を明らかにしようとする。「お前は、電磁場の中で生まれたんだ」(2枚目の写真)。「何だって? 僕は、プラハ6Bのパヴィル・ムシルだぞ」〔プラハ6は、市内中心の北西地区。ネットを見ると、「プラハ6B地区の豪華なマンション」といった記事があるので、「杉並区の」とでも言った感じ〕。それを聞いたパヴィル1は部屋に戻り、ベッドのマットレスまでめくって試料がなくなっていることに気付く。あいつは、僕のコピーだ。パヴィル1は、この好機を利用しようと悪知恵を働かせる。パヴィル2:「急げよ、学校に行かないと」。パヴィル1:「待てよ、2人とも行くんか?」。「当たり前だろ? 遅刻しちゃダメだ」(2枚目の写真)。パヴィル2は 急いでミルクを飲み干すと、「とにかく、僕は行く」と告げる。パヴィル1:「もちろんだ。行けよ。急がないと、遅れるぞ」。「学校は僕のすべてだ」。「しっかり勉強しろ」。「ああ」。「教室では、気を散らすな」。「ああ」。「一番大事なのは、ひんぱんに手を上げることだ」。「もちろん」。こうして、パヴィル2が玄関を出て行くと、自由になったパヴィル1は、ゴリラのように胸を叩いて喜ぶ(3枚目の写真)。
  
  
  

アパートの外に出ると、管理人のモレゾヴァがたくさんのゴミ缶の外に散らばったゴミを掃除している。それを見たパヴィル2は、横に置いてあった箒を取ると、一緒に掃除を始める。昨日の今日なので、パヴィルなど信用していないモレゾヴァは、何かの悪だくみの一種だと警戒し、「何してんの?」と訊く。「掃除だよ。おばさん、なんで、こんなトコの掃除までしなくちゃいけないの? 見てよ、この皮。きのう、僕が箱に詰めて放り投げた奴だ」。「なんでそんなこと話すの?」。「ホントのことだから」。散らかしたのは、すべてパヴィルのせいだと思ったモレゾヴァは、パヴィル2を箒で叩いて追い払う。パヴィル2は、途中でミレクと遭う。「よお、パヴィル、古めかしい格好だな。今日、助けてくれるか?」。「もちろん、何するの?」。「だって、今日、歴史だろ。予習してないんだ。サッカーの練習の後、疲れてたからそのまま机で眠っちゃった」。「なぜ、ベッドで寝なかった?」。ベッドで寝なかった理由は、父親の車に悪戯したことで、さんざ尻を鞭でぶたれたから。通り沿いの空きスペースに入ると、ミレクはパンツを下げて、如何にひどく叩かれたかをパヴィル2に見せる(2枚目の写真)。「君は、やられなくて幸いだったな」。パヴィル2は、「でも、叩かれても仕方ないよ。車は君の両親にとって大切な存在で、大事にしてきたんだから。僕、すごく恥じてる! 君に全責任を押し付けるなんて フェアじゃないよ。僕の方がずっと悪いのに、何もされてない」(3枚目の写真)。パヴィル1とは別人のような いい子だ。
  
  
  

アパートに残ったパヴィル1は、自分のセーターの真ん中に、母の研究計画の「C3 ax」の文字を染め付け、鏡の前に立って満足そうに眺める(1枚目の写真)。そして、「技術者を目指す子供達の家」という、一種の資料館に行き、パヴィル2の誕生のヒントがないか調べようとする。一方、学校では、さっそくパヴィル2が手を上げる。問い掛けもしないのに上げられた手に、教師が何の用かと尋ねると、パヴィルは、「今日はミレクに板書させないで下さい。昨日の練習ですごく疲れてますから」と、挙手に相応しくない発言をする(2枚目の写真)。「ミレクが何をしたって?」。「サッカーの練習です。授業と同じくらい重要です。スポーツは、現代人の営みにとって必要不可欠であり、文化的、社会的、政治的、経済的観点での人材育成の基礎になるものですから」。この長広舌を聴いた生徒達から笑い声が漏れる。教師は、「ムシル、何 考えてるの? 下らない発言は止めなさい」と注意する。「下らなくありません。新聞に書いてありました」。「この前、お母さんに渡した連絡帳じゃ不十分だったようね。お母さんのサインを見せなさい」。連絡帳には、サインがあったので教師は、「お母さんは何て言ったの?」と訊く。正直が取り柄のパヴィル2は、「何も。ママは何も知りません。僕が代わりにサインしたから。いつものように」と、パヴィル1の行動をバラしてしまう。「ひねった足で、よくできたわね?」。「ハイキングに行きたくないから、フリしただけ。その時、どうしても盗みたい物があったから」(3枚目の写真)。教師は、「いいこと、そういう態度だと、いつかは大変なことになるわよ」と言って、連絡帳でパヴィルの頭を叩く。
  
  
  

再び ランチ・タイム。チュンドリークは、ランチ・トレイを持って、下級生が食べているテーブルに行くと、「ここは予約済みだ。どけ!」と命令し、1人の男の子のトレイを勝手に取り上げて、後ろのテーブルに置く。「紙が置いてあったろ」。別の女の子:「なかったわ」。「じゃあ、係が置き忘れたんだ」。チュンドリークの横に来た手下2人が、「だから、どくんだ」と、頭の上にトレイを置いて命じる。仕方なく、子供達は自分のトレイを持って席を立つ。その間に、チュンドリークは 周りのトレイからお菓子の入った皿を奪って自分のトレイの奥に並べる(1枚目の写真)。それを見た、“クラスの女の子” が、「喉が詰まっちゃうといいんだわ、このロクでなし」と批判したため、チュンドリークは 「そんな口きいて、許されると思ってんのか?」と言い、女の子の髪を掴んで頭を振り回す。その場に行き合わせたパヴィル2は、「気は確かか チュンドリーク、女の子を虐めるなんて」と注意する。「なんで? 男女同権だろ?」。「だからって、何をしてもいいってワケじゃない! 髪を掴むなんて! そんなことは許されない! テーブルから他の子を追い出して、お菓子を取り上げることもだ!」(2枚目の写真)。「許されるのさ。強い者勝ちだ」。「『強い者勝ち』なんか、許されるもんか!」。「そうか? 見せてやる」。チュンドリークは、女の子の髪を掴んで無理矢理立たせる。怒ったパヴィル2は、イスに乗ると、チュンドリークの髪を掴んで頭を振り回す(3枚目の写真)。それを見た手下2人が駆け付け、パヴィル2を床に押し倒すが、別の女の子が手下の脚に噛みついて助太刀。そこに、調理のおばさんがやってきて、ロクデナシの3人を追い払う。
  
  
  

パヴィル1は、資料館にあった光源を2つ目の試料に当ててみるが、全く反応しない。がっかりして学校に行くと、偶然 “クラスの女の子” に出会う。彼女は、いつもはパヴィルに冷淡だが、先ほど助けられ、勇敢な言葉も聞いたので、「パヴィル、カッコ良かったわね。チュンドリークには、あのくらい言ってやらないと」と笑顔を見せる(1枚目の写真)。パヴィル1は、何が何だかわからないので、生返事ですぐに別れる。さらに、担任に 「今日は」と言うと、変な顔をされる。そこで、すぐにアパートに戻り、「いったい何をしてきたんだ?」と訊く。パヴィル2:「必要なことをしたまでさ。それより、君は? 学校に来なかったじゃないか」(2枚目の写真)。パヴィル1は、「僕は、もう あんな学校には行かない。僕が行くべき所は、大学だから」と言いながら、バッグから試料の入ったポリ袋を取り出す。それを見たパヴィル2は、「すぐ研究室に返さなきゃダメだ。渡せよ、返してくる」と批判する。「人の問題に 鼻を突っ込むな。しくじったのは僕だから、自分で返す」。「なら、行けよ」。「分かった、いま行く」。そう言うと、パヴィル1は棚から派手な柄の布を取り出すと、「お前は、ちゃんと勉強しとけ。僕は、新鮮な空気を吸ってくる」と言い、アパートを出て行く。
  
  
  

パヴィルが向かった先は、多くの子供達が水遊びをしているプラハ市内の池(1枚目の写真)〔35年前の撮影なのと、大都市で風景がどんどん変わるので、場所は特定できなかった〕。パヴィル1は、砂場に行くと穴を掘り始める。級友のセメラが、「そこに何 持ってるんだ」と訊くので、パヴィル1はポリ袋に入れた試料を見せる。赤いゼリーに見えたので、セメラが「一口、食べさせろよ」と言うが、パヴィル1はセメラの手を振り払って砂の中に入れる(2枚目の写真、矢印)。そして、その上から砂を被せ、追い払う。そのあと、天気が急変し、強い風が吹き始め、雷鳴が轟く(3枚目の写真)。子供達は逃げまどう。その中で、卑怯なチュンドリークは、いつも通り小さな子供から自転車を奪おうとし、パヴィル1は 「今 助けに行くからな!」と叫び、その前に、大事な試料を回収しようと砂場に戻る。
  
  
  

パヴィル1が、砂場に行くと、埋めた場所の中から、ポリ袋を破って全裸の男の子が出てくる(1枚目の写真)〔パヴィル2の時も同様だったに違いないが、先に起きたので、パンツを見つけてはいていた/変なのは、ポリ袋が大きくなっていること。実際にはあり得ないが、“袋に入っていた試料” という点を強調したかったのであろう〕。ここから、2人目のコピーには③の印を付けて区別する。この “誕生の仕方” を見て、パヴィル1は 「雷なんだ」と、試料の活性化がなぜ起きたのかを理解する。パヴィル3が生まれる直前、パヴィル1はチュンドリークに対する怒りに燃えていたので、パヴィル3は 「チュンドリークをやっつけなきゃ」と叫び、チュンドリークに向かって行く。パヴィル1が 「相手は3人だぞ」と言っても、「それがどうした? 図体が大きいからって 何でもしていいハズがない!」と言うと、自転車を奪って逃げるチュンドリークを 全裸のまま追いかける。パヴィル1は、「待て! せめて布を巻き付けろ!」と、布を持って後を追う(2枚目の写真)。結局、追い付くことができなかった2人は、パヴィルのアパートに戻る。パヴィル1は、建物の裏から玄関に向かい、パヴィル3も、それに続く(3枚目の写真)。パヴィル3の大胆さを見て、パヴィル1は、「お前、ホントに怖いものないんか?」と訊く。「例えば、このまま屋根まで登れる?」〔ベランダを這い上って〕。「必要があれば」。「吼えるデブ公〔管理人のモレゾヴァ〕を、屋根に連れて行きたい」。「なぜ、また?」。「あいつは子犬が好きだから、子犬の後を追ってく。そしてら、ドアを閉め、屋上に置きっ放しだ」。「なぜ、そんなことを?」。「なぜ、なぜ、うるさいぞ。あいつは、危険な女で、僕を威嚇するんだ」。「そういう話には 乗れないな。僕は、誰とでも、顔を見て応対する」。そう言うと、モレゾヴァの部屋のドアのベルを鳴らす。ドアを開けたモレゾヴァは、パヴィル3の風変わりな姿を見て、「また 邪魔するの? 消えて」と悲しそうに言う。それ見たことかと、姿を隠していたパヴィル1がやってきて、ベルを押そうとすると、パヴィル3は 「手をどけろ」と強く牽制、パヴィル1が 「急にどうした?」と言って もう一度押そうとすると、「この、カス野郎!」と突き飛ばす。そして、部屋まで逃げていくパヴィル1を追いかける。
  
  
  

パヴィル1は玄関から飛び込むと、すぐにドアを閉めて鍵をかけ、目の前に現れたパヴィル2にドアを開けさせないよう、体を張って守る。パヴィル2は 「研究室に行かなかったのか? 試料はどこだ?」と咎めるように訊く。パヴィル1は 「ドアの後ろだ」と言って 自分の部屋に逃げて行くと、「開けるな」と命令する。パヴィル2が構わずドアを開けると、そこにパヴィル3が突入してきて、パヴィル2を1と間違え、「この、カス! 年寄りの病人を嘲(あざけ)るなんて!」と言って、殴りかかる。パヴィル2は 「僕じゃない。もう一人の方だ」と止めさせる(2枚目の写真)。そして、ベッドの下に逃げ込もうとするパヴィル1に向かって突進。2人で片足ずつを捉まえ、引っ張り出そうとする(3枚目の写真)。パヴィル1は 「病気だなんて知らなかった」と叫ぶ。それを聞いたパヴィル2は 「情状酌量の余地はあるな」と言い、2人とも足を放す。パヴィル2:「条件付きの免責処分だ」。パヴィル3は、ベッドの下に向かって 「またやったら、今度は許さないぞ!」と怒鳴る。パヴィル2:「それに、モレゾヴァさんのTVも直さないとな」。
  
  
  

次のシーンでは、パヴイル2と3が 歌いながらキッチンの掃除をしている(1枚目の写真)。歌っているのは、「Tancuj, tancuj vykrúcaj(ダンス、ダンス、くるくる回る)」というフォークソング〔https://www.youtube.com/watch?v=JE_3UQdefGs〕。すると、居間の方から発砲音が聞こえる。何事かと思って居間に入って行くと、そこでは、パヴィル1がTVの前に座り、お菓子を食べながら映画を観ている〔観ていたのは、Jiří Bartoškaという人気俳優が主演したチェコスロバキアのアクション映画『Muz na dráte』(1986)〕。パヴイル2と3は、TVの前に立ちはだかり、映画が見えないようにし、「そんなトコに座り込んで」「誰が許可したんだ?」と批判する。「邪魔するな! イイとこなんだぞ!」。パヴィル2は画面を見て 「バルトシュカ(Bartoška)」と言うとスイッチを切る。パヴィル1は 「何するんだ! 僕のアパートなんだぞ!」と怒る。パヴィル2は 「僕たちのだろ? みんなムシルなんだ」と反論。パヴィル1は 「お前たちはコピーだ。本物は僕一人だ」と再反論。今度は、パヴィル3が 「誰がコピーか教えてやる」と怒鳴り(3枚目の写真)、パヴィル2は 「君が本物なら、有意義なことをしてみせろよ。モレゾヴァさんのTVを直すとか」と言う。その時、ドアの鍵が開く音がする。パヴィル1は、ほっとしたように 「ママ」と言い、パヴィル2と3は居間から姿を消す。
  
  
  

帰宅した母は、完璧なまでに片付けられたキッチンを見て感動する(1枚目の写真)。パヴィル2と3は、ベッドの下にもぐり、パヴィル1はベッドに入ると、急いでセーターを脱いで布団にくるまる。母は、「あの子、本当に心を入れ替えたのね」と独り言を口にすると、そっとパヴィルの部屋に入って行き、眠ったフリをしているパヴィル1の布団を直す(2枚目の写真)。パヴィル2と3が、下からそれを見ている姿が 侘(わび)しいが キモい。
  
  

翌朝。パヴィル2は、昨日と同じように元気がいい。パヴィル3も運動をしているが、パヴィル1は相変わらず朝寝坊(1枚目の写真)。パヴィル2に 「起きろよ 怠け者。眠ってばかりいると、幸せを見逃すぞ」と 起こされる。キッチンに入ってきたパヴィル1は、棚からお菓子の箱を2つ取り出す。パヴィル2は 「ちゃんとした物、食べろよ」と注意。パヴィル1が、注意を無視して箱を開け始めたのを見て、パヴィル2は 箱を2つとも取り上げる。その時、席についたパヴィル3は 「また、クッキーなんか食べようとしたんだな?」と、批判する。パヴィル1が、仕方なく、用意してあったパンとチーズの皿を自分の前に置くと、今度は 「シャワー、浴びてこいよ」と注意される。2人とも、電話の向こうの母と違い、目の前にいるので厳しい(2枚目の写真)。パヴィル1は、2対1なので、仕方なく席を立ちバス・ルームに行くが、蛇口を間違えてひねってしまい、頭から冷水をかぶり悲鳴を上げる。寒い寒いと言いながら、こっそり持って来たクッキーを食べているところを、悲鳴を聞いてドアを開けた2人に見つかる(3枚目の写真)。2人はそのままバス・ルームに入って行くと、パヴィル1をパジャマのまま力ずくで冷水シャワーを浴びさせ、してやったとばかりにキッチンに戻って来る。しばらくすると、全身ずぶ濡れになったパヴィル1がバス・ルームから すごすごと出てくる(4枚目の写真)。
  
  
  
  

学校に行く時間となり、パヴィル2と3は、同時にスニーカーの紐を結び始める。そして、バッグを奪い合う。パヴィル3は 「途中で交代しよう」と言って、バッグの最初の持ち主となる(1枚目の写真)。パヴィル2:「だけど、その服1着しかないんだぞ」。そこに、パヴィル1が割り込む。「もう1着、あるぞ」。パヴィル1はクローゼットのドアを開け、「そこにあるぞ」と嘘をつき(2枚目の写真)、パヴィル2の背中を押して中に入れると、ドアを閉めて鍵をかける。玄関に戻ったパヴィル1は、3に向かって 「学校に急げよ」と言い、玄関から追い出すと、そのままベッドに直行する。
  
  

3度目のクラスでのシーン。朝、担任が教室に入って来ると、パヴィル3が黒板を拭いている。教師は、「何してるの、ムシル? 今日は、妨害しないでくれるわね?」と訊く。「考えてますけど、どうするか まだ決めてません」(1枚目の写真)。「じゃあ、何も考えないことね」。そう言うと、パヴィル3を呼び寄せ、「予習はちゃんとしたの?」と尋ねる。「あんまり。時間がなかったから。昨日、作られたばかりなんで」。この言葉に生徒達は笑う。「作られた? どうやって?」。「普通に。稲妻が光り、砂から這い出ただけ」(2枚目の写真)。それを聞いた生徒達から、「虫だ!」「ダチョウね」「イグアナ!」と声がかかる(3枚目の写真)。
  
  
  

あまりの騒ぎに、校長が 「いったい何事だ?」と 入って来る。そして、担任に原因を訪ねる。担任は、「変わったことはありません。ムシルが、なぜ予習をしてこなかったかを 話していたんです」と説明する。校長は、改めて、予習をしなかった理由を尋ねる。「勉強はしました。宿題はしませんでした。2番目がもうやってたから」。「『2番目』? それは誰だね?」。「もう一人の僕です」(1枚目の写真)。「そうか、君には2人目がいるんだな。それは面白い。その子は、今 目の前にいる子よりずっといい子だといいな」。「それはどうかな。僕たち、ほぼ同じなんです」(2枚目の写真)。ただ、3番目はロクデナシです」。「『3番目』?」。校長は、パヴィル3の精神状態が心配になり、頬に手を当て(3枚目の写真)、「もういいから、お座り」と質問を終わらせる。校長は、担任を傍らに呼ぶと、パヴィルの異常を、ニュースで言っていた “異常に低い気圧と 太陽フレア” のせいにしてしまう。ここで、一瞬、アパートでの状況が映る。パヴィル2は、クローゼットから出せとドアをドンドン叩き、パヴィル1は、それを無視し、TVの前にお菓子を持って座ると、「この映画を子供に観せてはいけません」という放送を見ている。
  
  
  

学校が終わった後、チュンドリークは、先日サッカーボールを奪い、昨日は雷雨の中、自転車を奪った年下の子を呼びつける。「文句、言いたいんだろ、お前の自転車を盗んだ奴に? 盗んだのは誰だ?」。この あからさまな挑発とも言える問い掛けは、新たな虐めの始まりかもしれいと思い、少年は、目の前で盗まれたのに 「知らない」と答える。「俺じゃないのか?」。「違う」。「じゃあ、自分で自分の自転車を盗んだのか?」。「そうだよ」。「なら、みんなにそう言って、俺に謝れ」と言い、地面に押し倒す。それを見たパヴィル3は、「チュンドリーク、放してやれ!」と怒鳴る。「いいか、ムシル、それ以上ガタガタ言うと 痛い目に遭うぞ」。「放せ。さもないと 殴るぞ!」(1枚目の写真)。そう言うと、パヴィル3は果敢にもチュンドリークに飛びかかっていき、その勢いで、地面に倒れた後も 相手の上に乗って攻撃する(2枚目の写真)。手下2人がいないので、戦いはパヴィル3が優勢だったが、そこに女性教師が割り込んでパヴィル3を引き離す(3枚目の写真)。そこに現れた校長は、「チュンドリーク、こうした行為をやめないと、どういうことになるか警告しただろう」と、真っ先にチュンドリークを叱るが、女性教師は、殴っていたのはパヴィルの方だと指摘する〔周りにいた生徒からは、状況を理解しない余計な口出しに不満の声が上がる〕。校長は、パヴィル3に向かって、「二度としないように」と注意するが、パヴィル3は 「約束できません。チュンドリークはまた何かやらかしますから」と反論し、「さっさと行け!」と叱られる。
  
  
  

アパートでは、クローゼットのドアを叩き続けていたパヴィル2が、ようやく出してもらえる。パヴィル2は、さっそく 「教科書はどこだ?」と食ってかかるが、パヴィル1は、「何のために? 授業はもう終わったんだぞ」と、バカにしたように言う(1枚目の写真)。それを聞いたパヴィル2は、何も言わずにアパートを飛び出て学校に走って行く。パヴィル1も、同様にアパートを飛び出るが、走って行った先は、逆方向。そこには、学校から帰った子供達がいっぱいいる。パヴィル1は、「君は、僕らのリーダーだ」と言って迎えられる(2枚目の写真)。「カッコ良かった」「あのワルをやっつけた」。パヴィル1が次に会ったのは、いつもの “クラスの女の子”。「あなたって、どんどん成長するのね」。「僕が?」。「今度、悪を罰し、正義を通す気になったら知らせてね、喜んで見に行くから」(3枚目の写真)。パヴィル1には、何が何だかさっぱり分からない。
  
  
  

学校では、パヴィルの担任が、校長に、パヴィルの許し難い行動について報告している。最初に見せたのは、パヴィル1が捏造した母のサイン、次が、担任を校長室に呼んだ時のカセットテープの音声。その最中に、パヴィル2が入ってきて 「今日は 謝りに来ました」と述べる。担任:「ぴったりね」。校長:「話して」。「今日、学校に来られなかったことを謝りに来ました」(1枚目の写真)「朝、行こうとしてたら、一瞬、警戒を解いた際に、騙されてクローゼットに閉じ込められました」。「誰にやられたんだね?」。「です。何度も解放しろと頼んで、さっきようやく自由になりました」。この矛盾した説明に、校長は、パヴィルの悪ふざけだと解釈し、「出てけ!」と命じる。一方、チュンドリークは手下2名を連れて、工事中の舗道の仮屋根の上に上り、復讐しようと パヴィルがやってくるのを待ち構えている(2枚目の写真)。3人の期待通り、パヴィル1がやってくる。年下の子供達と一緒だ。パヴィル1:「なんで僕にまとわりつく?」(3枚目の写真)。「僕たち、見たいんだ」。「何を?」。「チュンドリークをやっつけるトコを」。そこに、3人が飛び降りてきたので、パヴィルは必死になって逃げる。パヴィル1は、建物の壁を上手に伝って逃げる。
  
  
  

アパートに戻ったパヴィル2と3は、歌いながらお菓子を作っている(1枚目の写真)。歌っているのは、「Kočka leze dírou(猫は穴から登る)」というフォークソング〔https://www.youtube.com/watch?reload=9&v=RynBixeMjZ4〕。一方、実験装置の前に立ったパヴィル1は、「模擬品の奴らに 悩まされるのは もうたくさんだ」と言うと、特殊な蛍光管のようなものを用意し、「兄弟たち、ちょっと手伝ってくれないか?」と声をかける。2人が部屋に入ってくると、それぞれ1個ずつ蛍光管を渡し、「これを強く握っててくれ」と頼む。2人が握ると、通電し、管が青く光る(2枚目の写真)。2人は、嫌な思いをしただけで、試料には戻らない。怒ったパヴィル2は、ベッドに逃げたパヴィル1に飛び掛かり、パヴィル3は棒で叩く(3枚目の写真)。
  
  
  

パヴィル1は、修理したモレゾヴァのTVを持ってアパートを出る。パヴィル2が後について来ようとするので、「金魚のフンはやめろ。ちゃんと行く」と止めるが、パヴィル2は、「道を踏み外さないか、確認しないと」と言い、ドアに鍵を掛けたパヴィル3も、「君は信用できない」と断言する。パヴィル1:「そうかよ」(1枚目の写真)。パヴィル1は、モレゾヴァのドアのベルを鳴らす。中から 「鍵は掛かってないよ」の声がするので、パヴィル1は 「僕だよ、モレゾヴァさん」と言って、中に入って行く。モレゾヴァが、両足を台の上に乗せているのを見たパヴィル1は、TVを棚の上に置きながら、「どうしたの、モレゾヴァさん?」と尋ねる(2枚目の写真)。「静脈炎〔下肢の静脈内に血栓ができて、炎症を引き起こす病気〕って、こんなに酷いものとはね…」。その時、「今日は、モレゾヴァさん」と言いながら、パヴィル2が入って来てパヴィル1と並ぶ(3枚目の写真)。モレソヴァは、「私、熱があるんだわ」と、自分の目を疑う。そこに、さらに、「今日は、モレゾヴァさん」と言いながらパヴィル3も入ってくる(4枚目の写真)。「高熱だわ…」。
  
  
  
  

母が、アパートに向かって歩いていると、そこにパヴィル2が駆け寄ってきて、「やあ、ママ」と声をかける。「まあ、パヴィル、どこに行くの?」。「薬局。モレゾヴァさんが静脈炎だから」(1枚目の写真)。「お医者さんに診せないと」。「心配しないで、ちゃんとやるから」。そう言うと、アパートとは反対方向に走って行く。ところが、母がアパートの階段を上がっていると、パヴィル3が雑巾で階段を拭いている。「まあ、パヴィル」。「やあ、ママ」。「ここで 何してるの?」。「モレゾヴァさんが静脈炎だから、代わりに掃除してる」(2枚目の写真)。「でも、お薬は?」。「心配しないで、ちゃんとやるから」。母が、部屋に入ると、キッチンの窓が開き、パヴィル1が 「やあ、ママ」と声をかける。階段にいたパヴィル3を通り過ぎて部屋に入って来たので、鈍い母も、さすがに 「ねえ、どうやって入ったの? それに、ここで何してるの?」と訊く。「セモリナのポリッジ〔五穀粥〕だよ」(3枚目の写真)。「お粥?」。「モレゾヴァさんが静脈炎だから、ダイエット食が要るでしょ?」。「階段と薬局はどうなったの?」。「心配しないで、ちゃんとやるから」〔3人とも、最後の返事は同じ〕
  
  
  

母が居間でTVを観ている〔Karel Gottが、『Oh, Maria』を歌っている〕。母の横には、パヴィル2が 甘えるように、ぴったり寄り添っている(1枚目の写真)〔目線は、キッチンのドア〕。しばらくすると、催促されたように見え、パヴィル2は 母から離れる。キッチンでは、パヴィル3が上着を脱いでパヴィル2が戻ってくるのを待っている。そして、すぐに服を着替える。パヴィル3がパヴィル1に 「今度は僕の番だ。15分ずつだって約束したろ」と念を押すと、パヴィル1は 「勝手に決めるな。ここにいられるだけで幸せだと思え。あれは、僕のママだ」と釘を刺す。パヴィル3:「僕たちのママだろ」(2枚目の写真)。パヴィル1は、パヴィル3が出て行った後で、2に向かって 「何て奴だ。試験管でも抱きしめてりゃいいんだ」とブツブツ。パヴィル3は、母に甘える(3枚目の写真)〔同じ服に着替えたので、1枚目の写真とそっくり〕。すると、ドアのベルが鳴る。母が見に行こうとしたので、パヴィル3は、「座ってて、僕が見てくる」と言って玄関に走る。先にドアに着いたパヴィル2がドアを開けると、外には誰もいない。もう一度ベルの音がしたので、パヴィル3が音源を見つける。パヴィル1が教室で使ったテープレコーダーによる “騙し” の再現だ(4枚目の写真)。「裏切り者!」。2人がキッチンのドアをそっと開けて居間を覗くと、それを待っていたかのように、パヴィル1が “あっかんべー” をして見せる(5枚目の写真)。そのあとで、パヴィル1は、意外なことを母に尋ねる。「ママ、もっと子供欲しくない?」。「そんな、どこにいるの?」。「信頼できる情報源があるんだ。あと2人いると最高なんだけど」。「面白い子ね」。
  
  
  
  
  

いつも通り、パヴィル1が朝寝坊をして目を覚ますと、パヴィル3の声が聞こえる。「モレゾヴァさん、きっとお腹空かしてる。いくぞ」。パヴィル2:「ちょっと待て」(1枚目の写真)。それを見たパヴィル1は、「何だ こんな朝早くから。今日は土曜日だぞ」と、声で起こされたことに文句を言う。パヴィル2:「大きな声出すな。ママを起こしたいのか?」。パヴィル1は、もう一度ベッドに横になる。パヴィル3は、階段を下りながら、「どっちが行く?」とパヴィル2に訊く。「どっちだっていい」。そこで、2人で じゃんけんをすることに。しかし、何度やっても “あいこ”(2枚目の写真)。結局、パーのようにみえるチョキを出したパヴィル2が負け、パヴィル3が朝食を持って行く〔パヴィル2は、ミレクに歴史を教えに行く〕。すると、モレゾヴァは、2匹の犬にエサをやろうとしてキッチンに座り込んだことはいいが、立ち上がることができないでいた。「助け起こしてくれない」。しかし、小さなパヴィル3に、何倍も重いモレゾヴァを持ち上げることなど到底できない。パヴィル3は、「持って来た朝食のトレイを モレゾヴァの両脚の間に置いた鍋の上に置くと、「心配しないで。何とかするから」と言い、さらに、「ひょっとして、木の板持ってない? 古いドアみたいな?」と訊く。
  
  
  

パヴィル2は、ミレクが車に乗ろうとしているところに駆けつける(1枚目の写真)。そして、勉強の手伝いを申し出ようとするが、先に車を壊した張本人だけに、すげなく追い払われる。パヴィル2は、郊外にあるミレクの家に向かって走る。パヴィル3は、ベッドのマットレスの下に2枚の長い木の板を “ハの字” 型に挿入し、その先端にドア板をベッドに並行に置いて モレゾヴァを乗せる。木の板の交差部にロープを縛り付け、シャンデリアに結び付けた別のロープから吊るした滑車を使い、パヴィルがロープを下に引けば、“ハの字” 型の板と、その上のドア板とモレゾヴァが持ち上がる仕組みだ(2枚目の写真)。しかし、モレゾヴァが上がり過ぎたのか、2枚目の写真の左側に転がっていき、ベッドの上で止まるはずが、勢い余ってベッドを通り越し、その先の床に落ちてしまう(3枚目の写真)。「誰かと一緒に住まないと無理だよ、モレゾヴァさん。息子さんのホンザには頼めないの? どこにいる? 話してみるよ」。「ボンベイ〔インド〕よ。船員なの。ホンザだったら、あのクソ親爺みたいに、私をほったらかしにはしないでしょうね」。「クソ親爺って?」。「夫のムラーツよ」。「やっぱりボンベイにいるの?」。「いいえ、橋の下。トレーラーハウスに住んでて、建設現場の見張りをしてる。私が、あいつの頭から熱いスープを掛けて 禿げ頭にしちゃったから、怒って出てったの」。「ちょっと待ってて、その “クソ親爺” を連れてくるから」。「クソ親爺の顔なんか見たくもないわ」。
  
  
  

パヴィル1がベッドで寝ていると、ドアのベルが何度も鳴らされる。パヴィル1は、2か3が戻って来たと思い、「お前らアホか? ママに見つかったらどうする」と言いながらドアを開けると、訪問者は研究主任のトレチカ。この日は土曜だったが、彼は、水曜にベオグラード〔今のセルビア、当時のユーゴスラビアの首都〕で、今回の発明に関する講演をすることになり、急きょ、一番の協力者であるムシル博士に相談に来たのだ。2人の会話は省略するが、そこに、パヴィル1がパジャマ姿のまま入って来て、「雷を試してみたら?」とトレチカに提案する。「雷。いいとも。どんな雷だい?」。「普通の。稲妻が光り始めたら、試料を窓の外に出して…」。しかし、母は 「止めなさい、パヴィル。あなたを 頭の切れる子だとみんなに言ってるのに、そんなバカげたことを言うなんて…」と否定する。パヴィル1は 「すぐ、2人が戻ってくるから、何もかもホントだって分かるよ」と主張するが(1枚目の写真)、母は取り合おうとしない〔トレチカは、面白いアイディアだと思っている〕。一方、パヴィル3は、トレーラーハウスを捜し当て、ドアをドンドン叩く。すると、禿げた老人が顔を出し 「何の用だ?」と訊く。「ムラーツさん、どこにいるか知ってる?」。「なんで訊く?」。「その人の奥さんが病気になったから、至急戻って欲しいんだ。誰も世話するひとがいない」(2枚目の写真)。「あいつが お前を寄こしたのか?」。「ううん、モレゾヴァさんは 『クソ親爺の顔なんか見たくもない』って」。「ここには、ムラーツはおらん」。パヴィル3は、すぐ近くにいたクレーン車の運転手にムラーツの居所を訪ね、トレーラーハウスだと言われると、「ムラーツさん、家に帰らなきゃ。奥さんが病気だ。面倒見てあげなきゃ!」と叫びながら、勝手にドアを開けて中に入ろうとする。ムラーツは、「出てけ!」と、パヴィル3の胸を押し、彼は地面に吹っ飛ぶ(3枚目の写真)。
  
  
  

郊外にあるミレクの家まで歩いていったパヴィル2は、門の鉄柵のところから、ミニカーの下にもぐって整備をしている父親にむかって、「今日は。ミレク、いますか?」と訊く。「おらん」。パヴィル2の声を聞いて2階からテラスに顔を見せたミレク本人が、「いるよ」と言う(1枚目の写真)。しかし、車の下から這い出してきた父親は、パヴィル2の方に歩いて行きながら、「ミレクはどこにもいかん。歴史の勉強をするんだ」と言う。しかし、パヴィル2が 「そのために来たんだよ」と言って 教科書を振ると、2階のテラスから、母親が 「助かるわ。入ってらっしゃい」と許可を出す。パヴィル2が門扉を開けて数歩中に入ると、立ち塞がった父親が 「車と家から10メートル以内に近づくんじゃないぞ!」と強く牽制する(2枚目の写真)〔パヴィル1に、車を目茶目茶にされたので、何をされるか分からないと心配している〕
  
  

一方、トレチカがまだいるムシル家に来客があり、応対に出た母が 「パヴィル」と呼ぶ。誰だろうと思って玄関に行ったパヴィル1は チュンドリーク達3人を見て蒼白になる(1・2枚目の写真)。パヴィル1は居間に逃げ込んだあと、追い回されて、母とトレチカが仕事をしている書斎に行こうとして3人に捕まり、「放せ!」叫んで、一旦はキッチンに逃げる。あまりに騒がしいので、母が 仕事の邪魔になると見に行くと、パヴィル1が3人に担がれて玄関に向かうところだった。「いったい 何してるの?」。「パヴィルを外に連れてっても?」。明らかに異常な状態なのに、母は 「どうぞ、散歩でもしてらっしゃい」と許可する(3枚目の写真)。パヴィル1は、“こいつら僕を袋叩きにする気だ” と言えばいいのに、「イヤだ、行きたくない。宿題がいっぱいある。月曜にはテストが6つもあるし」としか言わない〔なぜだろう?〕。「そうね、勉強を先になさい」。パヴィルは、引き揚げていく3人に向かって、“ざまーみろ” とばかりに 鼻に当てた手をヒラヒラさせる(4枚目の写真)。
  
  
  
  

一方のパヴィル3。トレーラーの矢根に登り、開いている窓から 「ムラーツさん、奥さんが病気だ…」と。ワンパターンの呼び掛け。それに対し、そばに寄って行ったムラーツは、隠し持った容器の水をパヴィル3の顔めがけて浴びせかける(1枚目の写真)〔子役も大変〕。パヴィル3は、仕返しに 煙の出ている煙突を引き抜き(2枚目の写真)、トレーラーの中に白煙が充満する。たまらずトレーラーから出てきたムラーツは、長箒で屋根上のパヴィル3を叩こうとするが全然届かない。そこで、パヴィル3に向けて投げつける(3枚目の写真、矢印は長箒)。トレーラーの中に籠っていられなくなったムラーツは、仕方なく自転車に乗って市内に向かう。
  
  
  

パヴィル2は、家に入れないので、ミレクを庭に呼び出し、車から10メートル離れた所に木の長イスを置き、仲良く座って教科書を開く。しかし、パヴィル2が、「13-14世紀から始めるぞ」と言うと(1枚目の写真)、ミレクは教科書をポンと叩き、「そんなのどうだっていい。どうやったら、サッカーの試合に行ける?」と、まるで見当違いの反論。パヴィル2は 「義務が先、楽しみは その後だ」と言うと、教科書を読み始める。ミレクは、教科書を後ろにあったゴミ缶に投げ込むと、パヴィル2から逃げるように庭を走り回る。一方、パヴィル3は、ムラーツの自転車を追って走るが 追い付けない。途中、居酒屋の前に自転車が停めてあるのを見つけろと、窓から、「ムラーツおじいさんは いません? 外に自転車があるから、いると思うけど」と呼びかける(2枚目の写真)。体裁が悪くなって、仕方なく出てきたムラーツに向かって、パヴィル3は 「ムラーツさん、奥さんが病気だ!」と強く言い(3枚目の写真)、ムラーツは再び自転車を漕いで行く。
  
  
  

ミレクは、庭にある小さな小屋に逃げ込む。パヴィル2は、ドアが開かないように一輪車を立て掛けて押さえると、ドアの小さな窓〔ガラスはなく、穴が開いているだけ〕から中世の地図を見せて、勉強させようとする。それに対し、ミレクは、中からブラシを出して地図を押し退ける(1枚目の写真、矢印はブラシ)。この攻防のさ中、ミレクの母親から、ランチ・タイムの声がかかる。パヴィル2が家に入れないので、食事は庭の木の箱の上に置かれる。パヴィル2は、ミレクに 「午後試合があるから、太る肉は食べちゃダメ」「満腹だと動けない」と声を大にして言うと、両親は、試合のことを蒸し返すパヴィル2に文句を言う。ミレク:「ほらな、頑固なロバみたいだろ」。パヴィル2:「両親を、そんな風に言っちゃいけないよ」。そして、「ママさんは、休みたいんだ。君が、ママさんみたいに体重が70キロもあったら、ゴロンとしてたいよ」と、ワザと、窓の近くで母親に聞こえるように話す。それが聞こえた母親は、「64キロよ」と打ち消す。パヴィル2:「怒らせる気はなかったんです。なぜ試合に出られないのか、ミレクに説明してたんです」(2枚目の写真)。この言葉が引き金となり、父親の態度がガラリと変わる。「行っていいぞ。10回だって」。そして、プラハまで、ミニカーではなく、秘蔵のサイドカー付きのオートバイで行くことに(3枚目の写真)。
  
  
  

ムシル家のアパートでは、パヴィル3がいなくなったので、パヴィル1がモレゾヴァの部屋までランチを運んでくる。「いい匂いね。お母さんにお礼を言っておいてね」(1枚目の写真)。そして、パヴィル1に、犬を散歩に連れて行ってくれないかと頼む。パヴィル1は、快諾して2匹の小型犬にリードを付ける。モレゾヴァは、「熱が下がったら、あなたが3人に見えなくなった」と言う。一方、パヴィル3は ムラーツの自転車と並走している。口にする言葉は、いつも同じ。「奥さんが病気だ。急いで家に帰らなきゃ」。「邪魔だ」。「面倒見てあげなきゃ」。最後に、パヴィル2とミレクはサイドカー、奥さんは主人の後ろに乗り、一家総出でプラハに向かう(3枚目の写真)。
  
  
  

走り疲れて自転車から離されたパヴィル3は、路面電車に乗り、ムラーツの自転車の先で降りようとする。そして、ワンパターンの言葉を投げかけると、いい加減うんざりしたムラーツは、自分の長靴を脱いでパヴィル3に投げつける(1枚目の写真、矢印は長靴)。そこまでは、ある意味順調だったが、モレゾヴァの2匹の犬をアパートから連れ出した所で、パヴィル1は、待ち構えていたチュンドリークの手下に遭う(2枚目の写真)。逃げようと、後ろを向くと、もう1人の手下が 逃げられよう立ち塞がる。そして、その90度先にはチュンドリーク本人が。パヴィル1は、残された唯一の方向に逃げるしかない。パヴィル1は、繁華街に面した工事現場に逃げ込み、ビニールシートの下に隠れる(3枚目の写真)。
  
  
  

パヴィル2は、街角でサイドカーを降りると、アパート向かって走って行く(1枚目の写真、矢印はオートバイ)。そのオートバイは、パヴィル3とムラーツのペアとすれ違うが、互いに気付いた様子はない(2枚目の写真)。アパートの入口の前で、パヴィル2と3は出会う。その時、パヴィル1の「Pomoc〔助けて〕!」という悲鳴が聞こえたので(3枚目の写真)、2人は、声のした方に駆けて行く。
  
  
  

なぜ、悲鳴が聞こえたのか? それは、ビニールシートの下に隠れたパヴィル1が見つかり、チュンドリークが、「ムシル、お前 『強い者勝ちなんか、許されるもんか』って言ったよな?」と、パヴィル2が投げつけた反抗的な言葉を 嘲るように口にしながら、パヴィル1の頭をビニールシートの上から踏みつけたため。そのあと、手下の2人がビニールシートを剥ぎ取り、パヴィル1を地面に引きずり下ろす(1枚目の写真)。パヴィル1が、上級生から3対1の卑劣な暴行を受けようとした時、バンの上から声がする。「チュンドリーク、暴力を止めないと やっつけるぞ!」(2枚目の写真)。そして、その右の架設の台の上からは、パヴィル2が 「『強い者勝ち』を、身をもって体験することになるぞ」と怒鳴り(3枚目の写真)、直ちに緑服の手下に向かって飛びかかって 腹を思い切り殴る。その直後、今度は、パヴィル3が青服の手下に飛びかかり、顔を思い切り殴る。その後も、2人は、一方的に手下2人を殴り続ける。それを見たパヴィル1は、袋の上を這って行き、チュンドリークの足を引っ張って転倒させると、馬乗りになって殴る(4枚目の写真)。
  
  
  
  

場面は すぐに切り替わり、チュンドリークとその父親、手下2人とそれぞれの母親の計6人が、ムシル家に抗議にやってくる。最初に口を開いたのは、チュンドリークの父親で、「いいかね、あんたが 乱暴なガキどもに何もしないなら、俺がしごいてやるからな」と、強い調子で文句を言う。手下の母親の1人も、「見て、何にでも限界はあるけど、息子さんたちはそれを越えたのよ」。もう1人は、「こんな荒くれ坊主たちが、近所にいるなんて」と、それぞれ怒りをぶつける。パヴィルの母は、「誰のことを話してるんです?」と訊く(1枚目の写真)。「誰ですって?」「あんたのガキどもに決まってるじゃないか!」「こんなにひどいケガ負わせたのよ」。母:「何かの間違いよ。パヴィル、いらっしゃい」。パヴィルの部屋では、スピーカーから玄関での会話が聞こえてくる。パヴィル1は、ベッドに座っている2人に向かって、「僕は行くけど、お前たち 来るか?」と訊く(2枚目の写真)。結局、玄関に行ったのはパヴィル1だけで、パヴィル2と3はベッドから動かない。玄関まで出てきたパヴィル1の肩に手を置くと、母は 「これが、息子のパヴィルです」と言う(3枚目の写真)。「こいつ? 他にはいないのか?」。「この子 1人だけ」。トレチカ主任も、“そうだ” とばかりに、その横に立つ。チュンドリークの父親は、チュンドリークの腕を取ると、「こいつが、そのうちの1人か?」と訊く。「うん」。「2人目は?」。「こいつだよ」。「何だと?」。手下の母親:「3人目は?」。「こいつだよ」。「この子が3人?」。「うん」。別な手下の母親:「何、バカ言ってるの?」。「あんたたち、何人いたの?」。「3人」。チュンドリークの父親:「よく、それで、文句が言えるな。このガキは、お前の肩までしかないのに、ボロ負けか? 何て奴だ!」(4枚目の写真)。パヴィル1が、「ちょっと待って、ちゃんと説明するから」と言いながら寄って行くと、不良の3人は真っ先に逃げ出す。それを見た3人の親は、自分達の息子の不甲斐なさに呆れる。
  
  
  
  

トレチカ:「いったい、どうなってる?」。母:「さっぱり分からない」。パヴィル1は、「正直に話すよ。ホントに3人いたんだ。来てよ」と白状する(1枚目の写真)。しかし、パヴィル1が、自分の部屋のドアを開けて、「兄弟たち」と声をかけても、部屋には誰もいない。長方形の部屋で、隠れるところは棚が1つとベッドの下しかないが、そのどちらにもいない。ベッドの上には、パヴィル2と3が着ていた服が置いてあり、その下には、赤い試料が2個(2枚目の写真)。母は、トレチカに、「困ったわね。この子、最近 ちょっと変なの」と弁解し、「ボロは屑籠に入れて」と命じて部屋を出て行く。パヴィルは、2人が着ていた “ボロ” を悲しそうに抱いている〔試料は、自分の意志で元に戻れるのだろうか?〕。それから何日経ったか分からないが、研究所から母が電話をかけてくる。「あなたの “雷のアイディア” を試すことにしたわよ」(3枚目の写真)。トレチカは、その反応を知りたがったが、母が変な顔をしたので、「何て、言ってた?」と訊く。「『早起きは三文の徳』だって」。
  
  
  

チュンドリークたち3人組〔怪我は治っている〕が、年下の生徒の持っていた花束を奪ったり、女の子の髪を掴んで虐めている(1枚目の写真、右の矢印は花束、左の矢印は掴んだ髪)。その時、パヴィルと “クラスの女の子” が 3人の方に向かって歩いてくるのが見える(2枚目の写真、矢印はパヴィルだが、かなり離れている)。それでも、3人組は 虐めていた子の頭を撫でると、そそくさと逃げていく。
  
  

代わりに、それまで登場しなかった上級生が、新たな虐めの実行者となり、下級生が舗道に倒されて殴られそうになる(1枚目の写真)。一緒にいた “クラスの女の子” に「ほら」とプッシュされたパヴィルは、「おい、シュテラ、放してやれ。相手は2歳年下で、頭2つ分小さいんだぞ」と注意する。「だから、こいつは俺に従うべきなんだ」。「『強い者勝ち』は、ここじゃ許されん!」(2枚目の写真)。パヴィルの周りには、大勢の子供が集まり、固唾を飲んで見守っている。「ムシル、言葉に気をつけろ。次はお前だぞ」。「その態度を変えないと、痛い目に遭うぞ!」。シュテラが、掴んでいた子を横に「どけ」と放り出すと同時に、パヴィルが奇声を上げて飛びかかる(3枚目の写真)。映画は、ここで終わる。
  
  
  

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